セミナーのお知らせ

第三回ライプニッツ・セミナーのお知らせ 
 スピノザとカント
 自分を大事にするのはエゴイズムか−自己保存の思想とその可能性

「ライプニッツ研究会」では、年一回行われる通常の研究会(学会)のほか、ライプニッツをはじめとする17世紀の思想家のテキスト精読の会(セミナー)をおこなっています。通常の研究会や学会とは異なり、各回少人数の発表者による研究発表会です。一人当たり2時間程度と、やや長時間の研究発表、討議を行います。
第三回目のセミナーでは、スピノザ研究者である吉田量彦先生(慶應義塾大学、倫理学)にご発表いただきます。日程および場所は以下のとおりです。

時  2010年1月23日(土曜日) 15:00〜
場所 慶應義塾大学(三田) 大学院校舎4階 341番教室
             (教室番号が変更になりました)

(発表要旨)
 自己保存する主体の「自己中心性」を解きほぐして自己と異質のもの、他なるものに向けて開け放とうとする試みは、20世紀半ば以降のいわゆる現代思想の流れの中で、既に一つの思考の型として確立された観がある。そして一旦はこの型にそって一種の「自己」告発を展開しない限り、その思想は言わばある種の禊ぎを果たしていない時代錯誤的近代主義と見なされ、現代思想的には文字通りの意味で「論外」の扱いを受けるようである。しかしそうした型通りの批判を加える前に、そもそも自己保存の努力がどのような意味で自己中心的と言えるのか、またその努力の文脈において「自己以外の」存在とは一体なんのことであり、最終的にどのように位置づけられているのか、思想史的原点に遡った綿密な検討が求められているように思われる。
 この発表の前半では、そうした自己保存概念の原点にはスピノザ(1632-1677)のそれが位置していると想定した上で、スピノザの主著『エチカ』で展開された自己保存の思想を形式・実質の両側面から過不足なく明らかにしてみたい。近年の近代思想史研究が明らかにしているように、自己保存という発想、すなわち存在者がその時空的存在および存在様態を自らの力で保ち続けるという考え方は、思想の歴史の中で決して長きに渡り自明のものであったわけではない。それは関連する諸概念がたどったある多層的で複雑な変遷史の果てに初めて生じてきたものであり、その変遷に一応の決着というか落ち着きが見られるのが、他ならぬスピノザの思想においてなのである。その意味では『エチカ』で展開される自己保存の思想は、近代的な自己保存概念の一応の完成点であると同時に、それ以後の時点から振り返る場合には、常に類似の発想の原点として立ち現れてくるようなものでもある。
 自己保存の概念に関する原点的考察をスピノザに即して明らかにしたのち、後半ではそこからほぼ一世紀隔たったカント(1724-1804)の思想を例に、原点的考察がどのような形で後発世代に継承されているか検討してみたい。わざわざカントという、一般に方法論的にも内容的にもスピノザの対極に位置づけられがちな思想家を取り上げるのには、それなりの理由がある。たしかに著作のあちこちに残る断片的な言及から分かるように、カントはスピノザとその哲学的主張(と思われていたもの)に対し、ごく型通りの否定的反応しか示していない。書誌学的にも社会通念的にもスピノザの著作をまともに取り上げにくかった当時、これはある意味で仕方のないことだったろう。しかしカント自身の自己理解の表層をいったん離れ、その思想を(用例こそ多くはないが公刊・未公刊著作のあちこちに現れる)自己保存の概念を手がかりに組み直してみるなら、むしろスピノザ的発想との共通点の方が際立ってくるように思われる。
 もちろん、そうした共通の発想をカントがスピノザから直接借りてきたと考える必要はない。しかしこのように、いわば「まともに扱われなかった」相手と同種の発想が「まともに扱わなかった」当人の内にすら根づいているという事実は、自己保存の思想の意外なほど深い浸透度を逆説的な形で浮き彫りにしているように思われる。それは近代の思想家たちを表層から見えにくい部分で密かに結びつけ、時には当人たちの自己理解にすら反する形で彼らの思想に共通の色合いを与える、思想史における一種の地下水脈のような役割を果たしていたようなのである。


使用テキストは以下の通りです。
・スピノザ『エチカ』第3部定理4−9
・同、第4部定理20−27
・カント『判断力批判』第28節「あるひとつの力としての自然について」

ライプニッツ・セミナーでは、実際に哲学テキストを読むことで、テキストを分析する喜びを共有したいと考えています。スピノザ、カントにご関心のある方はもちろん、スピノザと同時期のライプニッツ、デカルト、ホッブズに関心を寄せる方、また、中世哲学を学ばれる方の参加も歓迎します。奮ってご参加ください。
なお、参加者には当日プリントを配布いたします。

「ライプニッツ・セミナー」のお問い合わせは、ライプニッツ研究会幹事 田子山和歌子(慶應義塾大学)へ
japan.leibniz.symposium@gmail.com
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